「研究活動を通した人間力の鍛錬」
本研究室のミッションは、人工知能が苦手とする能力を、生物の脳の構造・振る舞いをヒントに工学的に実現することにあります。この研究活動を通して、学生の皆さんは、卒業論文・修士論文を執筆して発表するという最終目標を達成しなければなりません。
目標達成する能力は、今後の人生のあらゆる場面において必須となる能力です。これを実現するためには、
- 目標設定
- 計画立案
- 自己管理
- 問題を解決するための思考能力
- 周囲の協力を得るためのコミュニケーション能力
- 研究室の仲間、教授との人間関係を良く保つための政治能力
の全てが必要になります。研究活動においてはそれらをフルに引き出して鍛錬することになります。これらを総合して「人間力」と呼ぶことが多いです。この能力を鍛えるのに「研究活動」は最適です。
しかしながらこれらを実現するには、各々の学生のモチベーションが大事です。少なくとも研究に対する興味が無ければ研究活動は苦しみでしかありません。本来、自らが興味を持って行う研究は楽しいものです。そのため、本研究室では各学生のテーマ選びには特に慎重に行っています。本研究室のゼミナールA,Bでは、研究室で使用する開発言語の特訓のみならず、テーマ選びも含まれます。
「他研究室と異なる点」
マイコンプログラミング、FPGAプログラミングなど、ハードウエアに近い部分でのソフトウエア開発能力が得られます。これらはいわゆる
組み込みエンジニア になりたい人に向いているでしょう。現状最も人材が不足している分野の一つです。また、当研究室では1からプログラミングすることを求めます。本気でプログラミング能力を高めたい人、思考能力を高めたい人に向いています。一方で、プログラミングすることに対して抵抗を感じる人には向きません。
「大学院進学を推奨します」
自分の問題解決能力を高めるために大学院進学を強く推奨します。学部で卒業した人に比べて2年間社会に出るタイミングが遅くなると困るのでは?と思う人も多いようですが、生涯賃金では大学院修了生の方が高くなります。また、社会に出た後の様々な選択肢が増えるということも事実です。特に第一線で働くエンジニアの多くは45歳前後で引退となり、その次のステップに移ることを要請されます。その時に大学院修了であるという経歴が選択肢を増やしてくれるのです。より良い人生を歩むためにも、大学院進学を推奨します。
「思能力を鍛える vs ChatGPT」
最近ChatGPTがプログラミングの環境を大きく変えつつあります。ChatGPTがものを考え、プログラムを作ってくれる時代に何故プログラミングだの思考能力だの言うのか?と思う人も居るでしょう。もちろん思考能力を衰えさせたくない、だからこの時代にも思考能力を鍛えるべきというのが理由ですが、現実問題として「
結局自ら考え、且つ、プログラミング能力を持たないとChatGPTを使ったプログラム開発が出来ない」のも事実だと思います。時代は変わったとは言え、結局はこれまで通り、私達人間の思考能力は必要だと考えます。その理由は、
- たとえChatGPTに作らせたコードであったとしても、その内容を完全に理解し、正しく動作することを検証出来なければなりません。プログラムを細部にわたって完全に理解するには、結局の所、自分でも同等のプログラミング能力を持っておく必要があります。
- 他人(AIを含む)が作った大規模コードを読む作業は、想像以上に辛い作業です。特に普段の自分の考え方とは異なる方向から作成されたプログラムを読み解く場合にはさらに深刻です。多くの場合、自分で作った方が早いのです。
というわけで、皆さんにアドバイスすることは、ChatGPTに問題を丸投げする使い方は、止めた方が良いと言うことです。そもそも自分の鍛錬にはなりませんし、そのプログラムに対する詳しい説明が出来ない状態では、研究したことにはなりません。
私の使い方: 実は、私もプログラミングの際にChatGPTを多用しています。でも、ChatGPTにプログラミングさせるという使い方は、していません。大規模なプログラムを組む場合は、自分で組んだ方が結局早いです。代わりにChatGPTには、プログラミング言語の仕様や、APIの使用方法の調査をさせています。ChatGPTはAPIの使用例や個別の問題を解決するための分かりやすい小規模なサンプルプログラムを提供してくれるため、そのサンプルプログラムを自分で拡張して使うという使い方をしています。また、自分の組んだコードが望み通りに動かず、原因が分からない際に、その原因究明にも使えます。優秀なアシスタントが常にそばに居るのと同じです。